紫の花束

フルートとピアノをやっています。

🎼フルート【演奏とホールの音響】

音大受験に向けて、定期的にフルートのレッスンを志望校の教授から受けることになり、音大のオープンキャンパスの時にレッスンをしてくださることになりました。

 

私が音短大時代から師事している、フルートの先生のお師匠さんでもある某教授は、フランス留学の経験もある方。

 

今回の個人レッスンが初めてではなく、高校時代、音短大のオープンキャンパスに行った際に、ケーラー1巻No.3のレッスンして頂いた思い出があります。

 

学生時代はフルートオーケストラの講義でも指導していただきました。

 

教授から語られる経験や、音楽の考え方はとても興味深いものばかり。

 

先日のレッスンでも、フランス留学や演奏に関して、日ごろから疑問に思っている事などを質問しようと、わくわくしていました。

 

その中でも特に気になっていた疑問を教授にぶつけたところ、非常に興味深いことを教えて下さいました。

 

とても感銘を受けたので、感動冷めやらぬうちに記録として記事にしました。

 

💜有名人の娘

 

昨年、某有名芸能人夫妻の娘さんと東京フィルとの演奏を聴きに行きました。

 

ネット上では、親の七光だとか、その演奏の実力に対する批判的な意見もありましたが、実力だけでなく、さまざまな経験を積むチャンスをしっかり掴むというのもとても重要です。

 

知名度があったからこその共演かもしれませんが、人前で演奏仕切るだけの実力がなければ、ソリストとして呼んではもらえません。

 

楽器をやっている人なら、本番でつっかえる事なく、曲を演奏しきる事の難しさは痛感する所‥…

 

更に人に聴かせられる演奏のというのは、本当に難しいものです。

 

ただ間違えずに吹けばいいというもではなく、ダイナミクスやニュアンスなどの表現の研究というのは尽きることはないでしょう。

 

特に彼女が通っている私立音大は、芸大と並ぶほどの実力者の集まりです。

 

学内での熾烈な競争は、外部の人間が聞いても、震え上がります。

 

その競争に精神的にやられてしまう人が絶えないそうです。

 

彼女以上の実力者は他にもいるかもしれませんが、その音大で高度な学びと競走についていけるだけの実力の持ち主です。

 

更に、アーティストというのは実力だけでなく、自身のプレゼンも重要になってきます。

 

どれだけ実力があっても、自分の存在を主張することが出来なければ、アーティストとして生きていくことは厳しいのです。

 

彼女はプロのフルート奏者になるという目標があります。

 

その為に自分が持てるもので勝負して何がいけないのでしょうか?

 

運も実力のうちです。

 

プロオケと共演する経験ができるのならば、そのチャンスを掴まない手はありません。

 

その経験が彼女の大きな糧になることはいうまでもありません。

 

更には、普段はクラシック音楽に興味のない人がクラシック音楽の素晴らしさを知るきっかけにもなります。

 

私自身、有名人の娘という肩書きに興味がそそられた部分は勿論あります。

 

しかし、実力者の集まりである某音大の学生さんの実力を知ることで、自分の立ち位置や、本来音大生として必要な実力を知りたい思いもあって、コンサートに足を運びました。

 

💜3階席での鑑賞と後悔

 

当日、演奏が行われる初台のオペラシティへと赴きました。

 

私が鑑賞した席は3階の中央席でした。

 

子どもの頃に最上階席で、コンサートを聴くことに憧れを抱いていた事もあり、その席を選びました。

 

一応、A席だったように思います。

 

個人的にコンサートでは少しでも良い席で聴きたいという思いがあります。

 

それに頻繁に足を運べない分、少しでも高い席のチケットを買う事で、オケの収入に貢献したいのです。

 

流石、話題性もあってか、お客さんも沢山いました。

 

クラシック音楽の中でも、マイナーなフルートのオリジナル曲を聴いてくれる人が、沢山いる事に胸が踊る気分でした。

 

このコンサートで、フルート作品にも興味を持ってくれる人が増えるといいなと思いながら、演奏の開幕を待ちます。

 

オケ団員が入場し、観客席から拍手が送られます。

 

その拍手は、もうすぐ登場するソリストに対する期待が込められているようでもありました。

 

そして、ソリストである若きフルーティストが入場すると、割れんばかりの拍手が沸き起こりました。

 

私も、待ってました!と言わんばかりに、手が痛くなるくらいに拍手を打ちます。

 

演奏される曲は、音大受験やコンクールでもよく課題として取り上げられる、セシル・シャミナード作曲の「(フルートと管弦楽の)コンツェルティーノ」です。

 

この曲は、フランスのパリ音楽院での試験局として、シャミナードに委託された曲でした。

 

とても華やかで、フルートの良さを味わえる小品です。

 

しかし、美しい旋律とは裏腹に低音から高音にかけての細かい動きが頻出し、基礎が出来ていれば良いとはいえ、曲の繊細な美しさを壊さないように演奏するのがとても難しい曲です。

 

フランス特有の繊細さと色彩感溢れる曲と言えます。

 

そして、演奏が始まりました。

 

オケが童謡の「ぞうさん」に似ていると言われいる、冒頭部分を奏でてすぐにフルートの美しい旋律が始まります。

 

ここで私は一気に興奮が冷めてしまいます。

 

演奏が拙いとか、そういうわけではなく「聴こえない」のです。

 

オケの音量に比べて、フルートの音が負けてしまっている印象でした。

 

オケもプロ集団であり、著名なソリストたちと共演してきているので、そこら辺の兼ね合いは熟知しているはずです。

 

実際、ソリストへの細やかな配慮を見て取れましたが、それでも音量バランスが取れていないように感じました。

 

では、ソリストの実力のせいかとなります。

 

耳を澄ませて聴いていましたが、音量以外で特に不満を覚えるようなことはなかったです。

 

ただでさえ有名人の娘で親の七光りとアンチされる中、大勢の観客の前で、しかも日本有数のプロオケと共演しても、乱れる事なく演奏する度胸に、心底感嘆しました。

 

相当なプレッシャーの中、ただの学生ができる事ではありません。

 

それもまだ10代の女の子がです。

 

どれだけ練習しても本番となると、その人前での演奏経験がものをいいます。

 

それまでのコンクールやコンサートなどで演奏してきた経験の場数を感じさせる演奏でした。

 

更に後日、テレビでコンサートの一場面が報道されましたが、3階席では聴きづらかった部分もマイクを通した音源では、オケとのバランスも良く、しっかりとフルートの音が拾われていました。

 

きっと、舞台から遠く離れた3階席を選んだ自分が悪いのだろうと、深く後悔しました。

 

もっと近くで聴けば、演奏を堪能できたのに…

 

💜2度目のしくじりからの疑問

 

今年の2月23日(水)の祝日に、都響による、団のフルート首席奏者である柳原佑介さんをソリストに、カール・ニールセンのフルート協奏曲が演奏されました。

 

ニールセンのフルート協奏曲は、数年前に洗足学園の学生によるフルートとオケの演奏を、YouTubeで鑑賞して以来、虜になった曲でした。

 

フランス系の繊細で、色彩豊かな曲が好まれる傾向にあるフルートですが、あの衝撃的な冒頭と普段のイメージとは、想像できないフルートの迫力のある演奏が印象に残っています。

 

初めてこの曲を聴いた時、迫力ある演奏に度肝を抜かれてすぐに、軽快な旋律を奏でたり、不安感を煽るような怪しさや、温もりのある優しい旋律に夢中になって、寝る前に聴いていました。

 

オケや木管楽器、トロンボーン、ティンパニといった多様な楽器との掛け合いなど、本当に聴き応えのある曲です。

 

いつか生で聴いてみたいと思っていたので、都響が演奏すると知って、金欠の中、チケットを入手しました。

 

本当はS席で聴きたかったのですが、お財布の中身を見て、泣く泣くB席に‥…

 

長年、恋焦がれた演目に、演奏会前日の夜は気分が高まってなかなか眠れませんでした。

 

軽い寝不足の中、池袋に向かう電車内でうとうとして、うっかり寝過ごしてしまいそうになりました笑

 

演奏会場である東京芸術劇場のアーティスティックな外装と内装に感動し、目が覚め、エントランスに入ってすぐのエスカレーターで5階の大ホールへと上がります。

 

意気揚々と大ホールの階のロビーに入り、スタッフさんからプログラムをもらいます。

 

スタッフさんの誘導の下、プログラムの冊子をちらちらと見ながら歩き、ニヤニヤして、自分の席に向かうためのエレベーターに乗った瞬間、私の高まったテンションは一気に急降下していきました。

 

「あ、今回も3階席を取ったんだった‥…」

 

自分の学習能力のなさに落胆しました。

 

昨年の失敗をすっかり失念していたのです。

 

「3階席じゃ、またフルートの音が届かないじゃん」

 

席に着き、舞台との距離を見て、更に落ち込みます。

 

曲目の1番最初のラヴェルを聴いて、自分の気持ちを立て直し、それに続くニールセンに一音も聴き逃すまいと身を乗り出しました。

 

シャミナードの時と同様に、ソリストが入ってきた瞬間に大きく拍手をしました。

 

そして、オケの迫力のある冒頭に続くフルートに全集中で耳を澄まして、フルートの第一音に驚きました。

 

冒頭と打って変わって、オーケストラが鳴りを顰めたとは言え、フルートの音がしっかりと3階席まで響いてきました。

 

フルートも大きめの入りではありましたが、それ以降のppすら、一音も漏れず、オケに負ける事なく、遠く離れた3階席まで届くのです。

 

これが舞台慣れし、経験を積んだプロと学生の演奏の違いかと思うと同時に疑問も出てきました。

 

この音量の出し方、音の響き方の違いというのはなんなのだろうか?

 

男性、女性の身体の作りが影響しているのだろうか?

 

実際、女性フルート奏者とオケが共演した生の演奏を聴いたのは、彼女が演奏したシャミナードの曲だけです。

 

それ以外は全て男性ですし、殆どの演奏を1階席で聴いていました。

 

プロの女性奏者とオケとの演奏を聴いたことがないので比較ができません。

 

YouTubeで聴いたところで、舞台のマイクを通していて、3階席のような遠い場所から聴いたときにちゃんと音が届くのだろうか?

 

こんな風にプロ奏者と学生のホールでの音の響き具合の違いを考えている内に、更なる疑問が出てきます。

 

私が通うフルート教室の発表会はホールで行われます。

 

オペラシティや東京芸術劇場劇場の大ホールと比べたら、規模はその半分ほどの大きさのホールです。

 

そんな小さめなホールでさえ、自分は最奥までしっかり音を響かせられるんだろうか……?

 

 

💜ホールの音響と経験の差

 

先日、教授に件の疑問をぶつけてみました。

 

⭐︎教授の回答※かなり要約してます。

 

彼女(某有名人の娘)はちゃんと実力のある子だよ。

それは小学生の頃から感じられたし、まだまだ若いし、伸び代があるからね。

 

ホールの音響はホールによって様々で、よく響くホールやそうでないホールと様々。

 

特によく響くホールだと同じスタッカートでも、響いて、観客席から聴いたら、短く聴こえないから、普段よりも更に短く演奏する必要がある。

 

話しながら、音量の解説に移るため、教授が自らフルートで実践します。

 

例えば君の前で演奏するならこれくらいかな?

 

シュテックメストの「歌の翼による幻想曲」の心地よく美しい演奏が始まりました。

 

うっとり、聴き惚れます💕

 

じゃあ次に、20人位ならどうだろう?

 

先ほどより大きくなった音量。

空気の震えが肌に伝わるようでした。

 

では、100人規模のホールで演奏する場合。

 

次第に設定人数が増え、会場が大きくなっていく内に、優雅な曲である「歌の翼」が、演奏音量の大きさに迫力を増していきます。

 

そして、300人、500人、1000人と増えていき、会場も大ホールの設定になっていくと、目の前で聴いているせいで、非常に圧迫感を感じました。

 

部屋の壁が振動するほどの音量に圧倒されました。

 

ここまでくると、圧迫感すごいでしょ?

 

でも、こんなに音量が上がっていても息の量は変わっていないんだよ。

 

ただ、演奏するための筋肉は使っているね。

 

普段、密閉された狭い空間で演奏していると、その範囲内での演奏表現になってしまう。

 

それを大ホールで演奏する想定でやってごらん。

 

基礎練とかは普段通りで良いけど、曲やエチュードなんかはその想定でやるんだ。

 

きっと10分やるのでさえ、かなり疲れるよ。

 

最初は疲れるだろうけど、やっていく内に必要な筋力と体力が養われるからね。

 

でも、音量は解決しても、やっぱりホールの音響によって聴こえ方が変わってしまう。

 

そこら辺はやっぱり場数なんだよね。

 

経験が必要なんだ。

 

その話を聞いて、私は次のような質問をしました。

 

では、コンクールとかの予選は録音でされることが多いと思いますけど、その時もやはり録音に適した音量を考えて演奏するんですか?

 

いや、そもそも予選の録音の段階で、順位を考えながら審査はしないね。

 

ちゃんと指が回ってるかとか、間違えずに吹けてるかとか‥…、そこら辺を篩(ふるい)にかけてるんだ。

 

だからまずは、つっかえずに曲を演奏し切ることが予選を通るための課題になるね。

 

言われてみて「なるほど」と納得しました。

 

下手したら数百人を超える応募者の演奏を、最初から音楽的な面、技術的な面全てで審査していたらキリがありません。

 

まずは最も単純な方法で篩にかけていくんですね。

 

録音で思い出したけど、ランパルは録音する際にスピーカーから発せられる自分の音を予測しながら演奏していたよ。

 

面白いよねw

 

学生時代にもランパル氏の武勇伝を聞かせてくださるたびに驚きましたが、今回も度肝を抜かれました。

 

スピーカーから発せられる音って…

 

これは数多のレコーディングを経験したからこそ、成せる技なのでしょうか‥…

 

💜ショパンコンクールでの落選

 

今回、教授の話を聞きながら、昨年行われた第18回ショパンコンクールのことを思い出しました。

 

天童とも言われた牛田智大さんが2次予選での落選というの

で、日本のネットでは審査員に対する批判で大荒れだったそうですね。

 

この反応を受けてか分かりませんが、牛田さんが自身演奏の反省などをTwitterでつぶやき、ホールの音響に適応出来なかったことをおっしゃておられました。

 

コンクール中、テレビやライブ中継など機器を通して聴いておられる方が多かったと思いますが、ここまでで触れたように演奏家はその演奏環境によって演奏の仕方を変えているが分かります。

 

ホールでもよく響いたり、響きにくかったり、音響設計がホール毎に異なってきます。

 

リハーサルがあるとはいえ、ホールにいる人の密度でもその響き方が変わる、非常に繊細な世界です。

 

だからこそ、こういうのは経験が物を言うみたいです。

 

テレビやPC、スマホなどの機器で視聴されていた方も多く、審査に色々な思いが交差していましたが、そういう物を通して、音楽を聴く時、ホールにいるお客さんに聴かせるための、レコーディングを目的とした演奏なのかを視聴者側も考える必要があると思いました。

 

乱暴に聴こえるのは大きくよく響く会場で、音の輪郭がボヤけてしまうから、あえて強めに演奏しているのかもしれない……

 

機器越しには表現豊かで良さげな演奏でも、マイクが近かったからそう聴こえただけで、ホールでは響きすぎて音の輪郭がハッキリしない、強弱に乏しい演奏に聴こえていたのもしれない……

 

そういうことを知るともっと音楽が面白くなるかもしれないですね。

 

音響……とても奥深いです。

 

音響について機会があれば勉強してみようと思います(*^^*)